入社以内の離職率34%

リーマン・ショック後の2010卒、2011卒就職戦線は氷河期に突入し、多くの就活生が苦しんだが、その後4年連続で内定率は上昇、就職環境はかなりいい方向に向かっていると思われる。現在の経済を考えると、急に景気が減速することは考えにくいので、おそらく、今後も就活生を取り巻く環境はよく、就活に期待が持てる年となりそうだ。

厚生労働省から新規学卒者の離職状況(平成23年度3月卒業者)のレポートが出ている。これは大卒者が入社後1年目、2年目、3年目に会社を辞める比率を調査したもので、直近の2011卒の世代では3年間でやめる率は32.4%である。もう少し詳しく、見てみよう。入社1年目での離職率は13.4%、2年目10.1%、3年目8.8%となっている。少し溯ると1995年卒から2007年卒までは3年以内の離職率は30%を超えており、2004年卒では36.6%を記録したこともある。その後2009年卒では28.8%まで下がったが2011年卒では32.4%と上昇傾向にある。

業種ごとに離職率の動向を見てみよう。離職率の平均を下回る業界は「建設」、「製造」、「電気・ガス」、「運輸・郵便」、「情報・通信」、「卸売」、「金融・保険」。反対に平均を上回る業界は「小売」、「不動産・物品賃貸」、「学術、専門・技術サービス」、「宿泊・飲食」、「生活関連、・娯楽」、「教育・学習支援」、「医療・福祉」。離職率が比較的高い業種は個人向けのビジネスが多く、学生にとってもアルバイトなどで経験することの多い業界だ。

実はこれらの業界の企業は人気がないわけではない。合同会社説明会ではこういった業界の会社のブースには多くの学生が集まっており、人気の企業も多い。個人向けのビジネスは学生にも分かりやすく、親しみがあり、将来像などの夢も語りやすく志望する学生が多い。にも関わらず、離職率が高い、というのは就活のあり方に問題を投げかけているように思う。

アベノミクスによる景気回復期待と円安効果でしばらくは経済環境は好調を維持し、これに伴って労働市場全体で需要は高まってくると思われる。新卒市場に関しても採用数が増え、就活生にとっては望ましい環境になると思われる。特に円安が定着してくれば、海外に転出した企業、工場が再び国内回帰を始め、雇用を押し上げる要因となるだろう。

しかし、マクロレベルでの就職環境の好転と、一人ひとりの就活生の企業研究は別の問題だ。3年以内の離職率30%超という数字は就活生の企業研究に何か、問題が内在されていることを示唆している。何十社という企業を回って自分で納得して決めたはずなのに、3年もたたずやめてしまうというのは、どこか判断に間違いがあったのではなかろうか。

自分は何に向いているのか、自分が何をやりたいのか、じっくり考えてみることが必要だ。自分の過去の行動を振り返って自分の適性を見つけるのもいい。あるいは自分が尊敬できる先輩を念頭において自分の将来の姿を想像するのもいいだろう。そして自分の適性と能力を最大限活かす業種、企業は何かをじっくり探してほしい。くれぐれも見た目の派手さや単純な分かりやすさだけで企業を選ばないことが重要だ。


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