今回は志望動機について考えてみよう。どこの会社の面接でも必ず聞かれる志望動機だが、苦労する学生が多いようだ。面接官にとっては「この学生は本当にウチに来てくれるのだろうか?」「ウチに入社して頑張ってくれるのだろうか?」。彼にとっては学生を見極める最大のポイントといって過言ではないだろう。
ところが学生にとっては、志望動機を考えようにも、会社のことを深く知るチャンスはあまりないため、志望動機がうまく作れていないケースが目立つ。50社、60社を回るようになると1社に対して深く企業研究をする余裕がなくなり、浅く、広く企業研究をすることになる。また先輩後輩のつながりが希薄になり、企業活動について聞くことが少なくなったため、企業や経済活動に関しての分析や評価が疎い人が多いように思う。まずは情報収集をしっかり行なって、その会社に対する想いをしっかり作ってもらいたい。
志望動機を印象付けるために私の経験からお話する。ある医療業界の会社での営業職採用の面接のサポートをしている。この会社を受験して面接を受ける学生の志望動機を整理すると、いくつかのパターンに分けられる。
(1) 自分の適性からの営業の仕事を志望する。
(2) 医療業界の安定性と成長性を評価していて志望する。
(3) 人の健康に貢献できる仕事ということで社会貢献度を評価して志望する。
(4) 自分や家族が医療や福祉関係で関わった経験をもとに志望する。
志望動機を大きく方向づけて考えると、職種軸と業界軸、そして経験軸がある。(1)が職種軸、(2)が業界軸、(4)が経験軸となる。志望動機を述べる際にはこの3つのベクトルをいかに統合するかが腕の見せ所。3方向に均等に触れるのではなく、一方向のベクトルをメインにして他はサブにする。そうしないと話として面接官の心の響かない。注意しなければいけないのは、3番目の社会貢献に触れるとき。企業における社会貢献とはあくまでビジネスを通じた貢献とうことで、個人のように社会正義や理想で活動しているわけではない。ここを勘違いしていると理想論や精神論として上滑りしてしまい、必ず、面接官からチェックが入る。
職種軸、業界軸、そして経験軸。どの軸をメインにするかは人それぞれだが、なるべく自分の経験や考え方といったパーソナルな部分と結びつけて構成することが大事だ。営業志望なら自分のどんな性格が営業に向いているのか、あるいはどんな経験が営業に役立つのか、それを具体例に基づいて作って欲しい。経験軸と一部ダブるが、自分軸ともいえる機軸を持つことが大事だ。くれぐれも「人と接することが好きなので」というような誰でも言える理由は使わないように。