仕事柄、各地の合同会社説明会に行くことが多い。会場で学生と言葉を交わしたり、企業ブースで企業説明を行なうなど学生諸君と触れて感じることは相変わらず、大手志向、人気企業志向が強いということだ。マイナビやリクナビのような就職サイトの就職意識調査では中堅中小企業への志望も多いという結果が出ているが、採用の現場ではほとんど実感できない。
合同会社説明会会場では有名企業には黒山の人だかりだが、無名な企業のブースにはほとんど学生が入らない。とくに今年は景気回復で大手の採用が増えた結果、大手志向が強まったのではないかと思っている。また合同企業説明会で目に付くのは、自分が知っている業界、利用したことのある業界の企業には学生が集まりやすいということだ。例を挙げると外食、パチンコ、小売チェーン店など。こういった業界はともすれば長時間労働になりやすく、離職率も高いので不人気業種といわれるが、身近にある業界なので学生は近づきやすいのだろう。
最近の就活のパターンとして、自分が知っている会社から回るという傾向が強い。その結果、学生の就活はかなり狭い範囲で皆がぐるぐる回っているような状態だ。就職活動で学生が訪問する企業は30社程度、多い学生で50社程度。エントリーする企業数も100社程度だが、そもそも新卒採用で活動している企業はどのくらいあるのだろう。
マイナビやリクナビでは1万数千社程度掲載されている。仮に3割が重複しているとしても20,000社程度は新卒採用を行なっている勘定である。多分、リクナビ、マイナビ以外のサイトに掲載されている企業もあるし、サイト掲載しない企業もあるからもっと企業数は多いだろう。当然、志望業界、勤務地、職種などの条件があるからすべてが就活の対象になる訳ではないが、1割として2,000社は自分にとって就活の対象としていいはずだ。しかし現実に2,000社の画面を見ることができる学生はいない。おそらく200社~300社位が限度ではなかろうか。学生の就活の幅は狭いのである。狭い世界で多くの学生がひしめき合って数少ないチャンスを争っている。
目を違った方向に向けるだけで新たな就活の可能性が大きく開けることもある。知っている企業ばかり回っていては他人と競合するばかりで就活はうまくいかない。自分が知らない他の多くに企業の中にも自分を育ててくれる企業があるはずだ。ナビで検索条件を変えてみることも必要だ。合同企業説明会では学生が集まらないブースにこそ意外と優良企業が隠れていたりする。もっと企業をさがそう。もっと自分の志望の幅を広げて見よう。
人口に膾炙する名言をひとつ。「人の行く裏に道あり花の山」。
花の山は必ずあるのである。